介護と終末医療をどう考えるか?寝たきり老人のいない欧米と日本の違い
介護を行うと、人生の最後を迎える終末医療について考えることが増えます。そのためか、介護や医療の情報に敏感になり、北海道中央労災病院長の宮本顕二さんと桜台明日佳病院の宮本礼子さん夫妻の終末医療に関する記事を読み、今後について考えさせられました。
日本の病院に行くと、高齢者の方たちばかりです。寝たきりの老人たちで常にベッドは一杯。それこそ、胃ろうだったり、ほとんど回復の見込みがない方も。本当にこれでいいのだろうかと常々思うところは多々あり。
他国ではどうなのだろうか?日本は・・・そして、自分の親及び自分自身の終末医療をどうすべきか考えていく中で、宮本夫妻の記事を読み、なるほどと腑に落ちました。
欧米に寝たきり老人がいない理由
日本は週末を迎えた時期の高齢者にも、若い人と同じように医療を施します。ところが、スウェーデンの医療は、高齢者に対して緩和医療に特化して治療方針を変えていることに宮本夫妻は衝撃を受けます。
スウェーデン・オーストラリア・オーストリア・オランダ・スペイン・アメリカと6か国の終末医療を視察して、根本的な違いが延命よりも緩和治療を重視する点。
海外では、がん以外の患者にもモルヒネを使い、痛みや苦しさを緩和することを重視していますが、日本ではあまり使いません。また、日本では延命処置をしないことが緩和医療につながると理解している医療者は少ないです。点滴の針を刺したり、尿道にカテーテルを入れて、つらい思いをさせます。水分も過剰に投与するので、痰たんが多く、痰を吸引する苦しみを与えています。ストレスから消化管出血もよく起こします。誤嚥性肺炎を繰り返し、発熱や呼吸困難が起きます。問題は濃厚な延命処置を行って、患者を苦しめていることに気がついていない、あるいは気がついても目をつぶっていることと思います。その視点に立つと、日本では緩和医療がおろそかにされていると思います」読売オンライン:欧米には寝たきり老人はいない。
私の両親も、入院中には、点滴が痛くてかなんとよく言っていました。幸い、2~3週間程で点滴は外れましたが、つらいのを何とかできないものかと悩みました。また、誤謬性肺炎になりかける・大きな異常はありませんが、胃カメラでの検診をしてみますか?とのお話しも頂き、検査をどこまですべきかも考えさせられました。
病院側も後で、訴えられるのも困るためか万全を期そうと様々な検査を受けさせます。検査を行うことによる身体への負担も相当あるので、高齢者には必要な検査だけでいいのではないかと思いました。しかも、お医者さんも看護師さんも常に忙しく、まとまった時間を貰って説明を受けるのも一苦労。
今の状態を続けていけば、団塊の世代が一斉に倒れる時期に医療現場は崩壊すると思います。宮本礼子さんの話によると療養病床の半分以上は、経管栄養や静脈栄養で延命されている人。延命措置を外すと患者さんが亡くなり病院経営が成り立たなくなる。
一方では、病院に入りたくても入れない人達もたくさんいるのですから、何だかなあと思います。点滴をしない・ただ寝ているだけの患者は診療報酬が低くなるために、入院できません。
家で介護するのも大変ですし、体力が回復するまで入院して欲しいと思っても満床と断られるケースは多いはず。
宮本さん夫妻が、海外視察をしてきた結果から、高齢者への通常・延命医療を止めて、緩和医療へと移行するためには、医療の診療報酬制度自体を変えなくてはいけないため、病院経営の観点から得策ではないとのこと。厚生労働省・医師会・看護師界全てを巻き込んだ議論になりそうです。機動的に変化できないのは公的医療保険のデメリットの一つ。
患者及び家族の意思で延命か緩和か選びたい
そうなると、大事なことは、患者及び家族の意思になってきそうです。患者の意思を無視しての延命治療を行うのはさすがに筋違いですし、医療側もどのような治療をどのような形で行うかは説明してくれます。ただし、様々な医師の説明に立ち会った経験から言うと、優先度を提示してくれないケースも多いのです。
患者及び家族側の思いや優先順位(ニーズ)も聞いてくれませんし、淡々と説明をして、治療方法を提示するだけ。そこから、メリットやデメリット・優先順位を聞き出すには、医療を受ける側にもある程度の知識が必要になります。知識がないと「先生!とにかく全力を尽くして助けてください」となって、ならばとあらゆる手段を駆使しての治療が始まってしまいます。
正直、80歳や90歳の人がガンや病気で亡くなるのは、家族にとっては悲しいことながら、自然の摂理でもあると思うのです。むやみに、医療ミスや介護ミスを報道して袋叩きにするのもどうかなと考えています。
できるだけ、自分にも家族にも、無理のないような形で終末を迎える方法を検討して話し合っておかないと、無意味な延命治療に巻き込まれてしまうリスクもありますよ。